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〔スタッフ研修〕千葉県 木戸泉酒造×和食日和おさけと

2024年5月12日

千葉県いすみ市大原の木戸泉酒造様を訪問させていただきました。
木戸泉酒造 5 代目荘司勇人様が、蔵の設備を案内してくださいました。

蔵の入り口には全長2メートルの大きな杉玉が。(重さは600キロ前後もあるとのこと!)
このサイズの杉玉を、毎年作り変えているそう。
毎年11月の終わりに、木戸泉のファンの方々30人くらいが集って、この杉玉をつくるというのを、ひとつの恒例イベントとしているようです。

木戸泉酒造について

明治12年創業の木戸泉酒造。
長期熟成が可能なお酒造り、そして【古酒】の販売も行っています。
なぜこのような酒造りになったのか。
昭和31年には荘司さんの祖父にあたる 3 代目が【高温山廃酛】仕込みの醸造法を確立しました。

当時のお酒は、流通段階で劣化してしまうものが多く、それでも国は酒税の回収がしたいから、お酒に保存料の添加を認めていました。
(昭和45年には人体に悪影響があるとされ、全面禁止に)

しかし糖類や酸味料の添加など危険性をいち早く気づき、醸造アルコールや防腐剤を使用しなくてもヘタらず熟成して楽しめるお酒をつくろうという思いがあったそうです。
そのような背景の中で、木戸泉の方々は、自分たちが造るものには余分なものを入れず、時間が経っても劣化しない熟成酒をつくろうという考えに至ります。

昭和40年代にとある農家さんとの出会いがあり、原料にもこだわるように。
化学堆肥を使わない、無農薬米に昭和42年から少しずつ移行し、今は全量無農薬米を使っています。
農薬化学肥料を使わず、植物性の堆肥だけを使った米を原料としているのです。
そして現在、日本酒の【古酒】というブランドの先駆者となりました。

高温山廃酛(こうおんやまはいもと)とは

日本酒の醸造における伝統的な製法の一つで、特にコクや旨味が強い酒を生み出すことで知られています。
この製法は、通常の山廃酛と同様に乳酸菌の自然発生を利用するものですが、発酵初期の段階で温度を高く保つ(55度)ことが特徴です。
これによりタンク内が無菌状態になります。
また、50〜55℃にキープすることで糖化しやすい温度帯になるので、殺菌+米の糖化が実現するのです。
しかしそうなると酵母菌、乳酸菌も生きられない。
そこで仕込んだ日の夕方にタンク内の酒母の表面に仕込み水で打ち水を行います。
表面温度が 30℃前後に下がることで乳酸菌、酵母菌も活動できる状態にすることできる。
この二つの温度帯のある層が絶妙に機能しているのが、高温山廃酛の特殊な製法なのです。

蒸し器

木戸泉さんでは、米の蒸しは木製の甑(こしき)にこだわっています。
写真は昨年新調したというもの。
前の甑は 20年ほど使用されていたそうです。
一回で 600kg のお米を蒸すことが可能な大きさ。
木製を使用する理由は2つ。
・米を蒸す際に外気で結露がでないこと
・甑に触れている部分のお米の柔らかさに影響が出ない
「昔ながらの道具の良いところを残していきたい」という思いから、木製の甑にこだわり続けています。

酒母仕込み

酵母は、以前は協会7号を培養して使っていましたが、4年前から全量無添加の蔵付き酵母に。
酵母の住みやすい環境づくりに尽力されており、はじめた当初は苦労も多かったそうですが、今は1本目のタンクから成功するようになったとのこと。
荘司さん自身が大学時代に野生酵母の研究をしていたことが、今役に立っているそうです。

見えないこだわりの「麹」

麹はすべて総ハゼタイプ。
種麹は、麹屋さんから買っていますが、所在わかるものを使いたいというこだわりもあり、変に化学的に作られたものは使わないようにし、昔ながらのオーソドックスなものを使っています。
庄司さんのお父様が作られている自然栽培の玄米を、麹屋さんに送り、それを使ってつくってもらっているような事も行っています。
「見えないこだわりだ」と語られていました。

テイスティング

多くの木戸泉酒造のラインナップを試飲させていただきました。
おさけとスタッフの感想を、いくつかピックアップしてご紹介いたします。

afs1989年、1990年飲み比べ

アフスという商品名は、このお酒の開発に携わった3名の頭文字をとったもの。
a →新潟の住乃井酒造の先々代社長のあだち様
f →木戸泉の技術顧問の先生、ふるかわ様
s →木戸泉の荘司様

色素は 90 年の方が濃く、89 年は薄い琥珀色。
味わいは 89 年が丸みを帯びた旨みと酸味少しキレのある酸味。
90 年は 89 年より旨みがやや低いが、甘味と酸味のバランスがあり後半少し苦味。
色素が 90 年の方が濃いため味も濃いと思ったが、トータル的に 89 年の方が味の要素は多いと感じました。

Afruge (アフルージュ)

Afruge No.1

上記のafsを赤ワイン樽で貯蔵し、出荷したもの。
アフスならではの酸味、熟成の濃醇な味わいと、赤ワイン貯蔵故のほろ苦さやスパイシーな風味が加わり、こんな日本酒もあるんだ、と驚く味わい。
重さはあるのに後味は酸味で抜けていくので、飲み飽きしない味。

Afruge No.2

afsを、白ワイン樽で貯蔵し、出荷。
No.1よりもより酸味が強調されて感じた。
後味もスッと切れてさっぱり飲める。
No.1と飲み比べてみると、貯蔵樽の違いによってこんなにも味が変わるのだなと実感できた。
木戸泉の熟成酒たちはアジアより欧米でのほうが人気があるらしく、
アフルージュのようなワインぽさ、洋食との相性の良さがその理由なんだなと感じた。

afs 新酒飲み比べ

新酒の精米歩合違いの飲み比べ。
高精白
蒸したサツマイモの香りに、フレッシュな蜜の香り。
味わいは乳酸を強く感じ、丸い旨みと柔らかい酸。
全体的にクリーミーな含みと優しい苦味と酸味でフィニッシュ。
低精白
香りはやや柑橘系と花の蜜の香り。
味わいは高精白よりアミノ酸を感じ、旨みと酸味が少し鋭い。
余韻の長いスポーツドリンクのようなニュアンス。
熟成させると変化が大きそうなのは低精白なのかなと感じた。

見学をさせていただいての感想

霞ヶ関店スタッフ

熟成酒の先駆けの酒蔵、という意味で今や周知されている木戸泉さんですが、その個性を作り上げるための努力や強いこだわりを見て聞いて感じることができました。
熟成酒や全量無添加酵母なんてものが、当たり前になかった時代に、可能性を求めて挑戦する中には、私たちには到底考えられないような苦労があったかと思います。
時代背景を交えて木戸泉さんの歴史を伺ううちに、いつも未来を見据えた日本酒の在り方にされ注視して酒造りをされてこられたのだなあと感じる面が多々ありました。
種麹の話をしてくださる際に、「見えないこだわり」という言葉を使って語ってくださったのが印象的でした。
今かたちとなって完成したこだわりだけでなく、幾度も挑戦を重ねて、こだわりぬいた末に出来上がったのが今の木戸泉さんのお酒かと思います。
その超えてきた挑戦の数々こそが、今はないけどたしかにある、なによりも「見えないこだわり」なのだと思いました。
年代ごとの熟成酒が並んでおり、今回見学したみんなも自分の生まれ年のものが飲んでみたい!とありがたくも試飲させていただきました。
これが〇〇さんの生まれ年の味かあ、なんて冗談交じりの楽しみ方をしてしまいましたが、実際に結婚祝いの品としても新郎新婦の生まれ年のものを送ったりなどで購入される方もいるらしく、歴史や時代を感じる楽しみ方をできるのも、早い段階で熟成酒にシフトし、永く熟成酒を造り繋いでいる木戸泉さんならではだなと思います。
今回学ばせていただいた事を、次は自分がお客様にお伝えし、
木戸泉のこだわり抜いたお酒をより、お客様にも楽しんで味わっていただきたいです。

大門浜松町店スタッフ

今回の蔵見学は酒蔵の歴史や、モダンなお酒でなく熟成酒や古酒を作っているかの理由を直接蔵
元様からお話を聞くことができて木戸泉の商品知識がすっと頭に入ってきました。
また、試飲させていただく量が凄く、案内していただいた荘司様が本当に丁寧に教えて下さったので多くのお客様に飲んでいただきたいと思いました。
気になったことは質問するということもでき、荘司様のお話もメモできたので収穫はたくさんありましたが、やはり試飲でアルコールが入るとメモする量が極端に減っていたため、次回はテイスティングメモをきっちり書こうと思います。

日本橋室町店スタッフ

「すいすい飲めるもので大量生産して売り上げを伸ばすのではなく、じっくりと味わって飲むような質の良いものをそれなりの価格で提供して売り上げを伸ばす」という量ではなく質に特化した方針。
こういった方針の下で行われる酒造りが日本酒の価値をさらに高めてくださっていると思います。
熟成酒は作られて評価されるまでが長くなってしまいますが、その期間や蔵の方の強い想い、絶え間ない努力があるからこそ、同じ商品でも温度帯や醸造年度などの違いによって様々な楽しみ方や驚きのあるという素晴らしいものだと思います。
今回、木戸泉さんにお伺いして熟成酒をより多くの方に楽しんでいただけるよう伝えていこうと思いました。

庄司様と参加スタッフみんなで。
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